⚠️ 重要な医療免責事項:この計算ツールは教育目的のみに提供されており、医学的診断や治療の代替となるものではありません。実際の医療判断については、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。
医学監修:腎臓内科専門医による内容監修済み
最終更新:2025年7月31日
参考文献:日本腎臓学会CKD診療ガイドライン2024、日本人のGFR推算式
対象読者:医療従事者、医学生、患者・家族(教育目的)
eGFR(estimated Glomerular Filtration Rate:推定糸球体濾過率)は、慢性腎臓病(CKD)の診断と病期分類において最も重要な臨床指標です。日本腎臓学会が推奨する日本人のGFR推算式は、日本人の体格や生理学的特性を考慮して開発された、世界で最も精度の高いeGFR計算式の一つです。
この計算式は、血清クレアチニン値、年齢、性別の3つのパラメータから腎機能を推定し、CKDの早期発見と適切な治療介入のタイミング決定に不可欠な情報を提供します。
GFR区分 | GFR値(mL/min/1.73m2) | 腎機能の状態 | 臨床的意義 |
---|---|---|---|
G1 | ≥90 | 正常または高値 | 腎機能正常、定期検査で経過観察 |
G2 | 60~89 | 正常または軽度低下 | 軽度低下、生活習慣の改善が重要 |
G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 | CKD管理開始、専門医紹介検討 |
G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 | 腎臓専門医による管理が必要 |
G4 | 15~29 | 高度低下 | 腎代替療法の準備が必要 |
G5 | <15 | 末期腎不全(ESKD) | 透析または腎移植が必要 |
出典:日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2024」
現在使用されている日本人のGFR推算式は、2008年に日本腎臓学会により開発され、2013年に改訂された高精度の計算式です。この式は、413名の日本人CKD患者を対象とした大規模臨床研究に基づいており、イヌリンクリアランスを基準とした検証により、従来の欧米の式よりも日本人において高い精度を示すことが証明されています。
年齢補正の生理学的意義:加齢に伴う腎機能の生理的低下は、糸球体数の減少、腎血流量の低下、糸球体硬化の進行によるものです。40歳以降、年間約1mL/min/1.73m²の割合でGFRが低下するため、年齢は重要な補正因子となります。
血清クレアチニンは、筋肉代謝の最終産物として産生され、主に糸球体濾過により腎臓から排泄されます。クレアチニンの産生量は筋肉量に比例するため、性別、年齢、体格による個体差が大きく、これらの要因を統合的に考慮したeGFR推算式が必要となります。
重要な点として、血清クレアチニン値は腎機能が50%以下に低下するまで正常範囲内に留まることが多いため、早期CKDの発見にはeGFRによる評価が不可欠です。
性別 | 計算式 | 適用条件 |
---|---|---|
男性 | 18歳以上の日本人男性 血清Cr: 酵素法 |
|
女性 | 18歳以上の日本人女性 血清Cr: 酵素法 |
計算式の説明:
開発者:日本腎臓学会 CKD対策委員会(2008年開発、2013年改訂)
日本人のGFR推算式は、イヌリンクリアランスを基準とした検証において、相関係数r=0.943という高い精度を示しています。しかし、以下の臨床的限界を理解して使用することが重要です:
重要:この計算ツールは教育目的に提供されており、実際の臨床判断は必ず医療専門家が行ってください。eGFRの解釈には、患者の臨床症状、他の検査結果、病歴を総合的に考慮することが不可欠です。
腎機能とは、糸球体濾過、尿細管再吸収、尿細管分泌の3つの基本的な生理学的プロセスを通じて、体内の恒常性を維持する腎臓の総合的な機能を指します。健康な成人の腎臓は、1日約180リットルの原尿を濾過し、そのうち約99%を再吸収して最終的に1.5-2リットルの尿を産生します。
1. 排泄機能:尿素、クレアチニン、尿酸などの代謝産物の除去
2. 体液調節:水・電解質バランス(Na⁺、K⁺、Cl⁻、HCO₃⁻)の維持
3. 酸塩基平衡:血液pHの恒常性維持(7.35-7.45)
4. 内分泌機能:エリスロポエチン、レニン、活性型ビタミンD₃の産生
5. 血圧調節:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による循環調節
糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate: GFR)は、腎機能評価のゴールドスタンダードとして位置づけられています。GFRは、単位時間(1分間)あたりに糸球体で濾過される血漿の体積を表し、通常は体表面積1.73m²あたりで標準化されます。
健康な若年成人のGFRは約120-130 mL/min/1.73m²ですが、40歳以降は年間約1 mL/min/1.73m²の割合で生理的に低下します。この生理的変化を考慮した上で、病的な腎機能低下を適切に評価することが重要です。
測定法 | 精度 | 臨床応用 | 特徴 |
---|---|---|---|
イヌリンクリアランス | ★★★★★ | 研究用 | ゴールドスタンダード、侵襲的 |
eGFR(推算式) | ★★★★☆ | 日常診療 | 簡便、非侵襲的、高精度 |
クレアチニンクリアランス | ★★★☆☆ | 特殊な場合 | 24時間蓄尿が必要、誤差大 |
日本における慢性腎臓病(CKD)の有病率は約13%(約1,330万人)に達し、新たな国民病として注目されています。CKDは心血管疾患のリスクファクターでもあり、eGFR 60未満では心血管死亡リスクが2-3倍増加することが大規模疫学研究で明らかになっています。
eGFR計算は、慢性腎臓病の早期発見と適切な管理において不可欠なツールです。日本人のGFR推算式は、日本人の生理学的特性を考慮した高精度の計算式であり、日常診療から大規模疫学研究まで幅広く活用されています。
しかし、eGFRはあくまで推算値であり、個々の患者の臨床状態、他の検査結果、症状を総合的に評価することが重要です。特に、筋肉量の極端な増減、急性腎障害、特殊な病態では、eGFRの解釈に注意が必要です。
腎臓内科専門医
日本腎臓学会専門医・指導医
大学病院腎臓内科勤務、CKD診療歴15年
専門分野:慢性腎臓病、透析医学、腎移植、電解質異常
所属学会:日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会
📅 記事情報
初回公開:2024年1月15日
最終更新:2025年7月31日
次回更新予定:2025年12月(日本腎臓学会ガイドライン改訂に合わせて)
⚠️ 重要な免責事項:本計算ツールおよび解説は教育・情報提供目的のみに作成されており、個別の医学的診断、治療、医療アドバイスを提供するものではありません。健康に関する判断は、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。